健康な生活は健康な口腔(こうくう)から…

歯は私たちが生きていく上でとても大切な臓器です。目や耳、心臓や腎臓などと同じく、精緻な構造と目的を持って、私たちに与えられたのです。

野生動物が歯を失うことは死を意味します。

しかし我々人間はたとえ歯を失ってもそれを補い、修復し、生きていく術を身につけました。私たち歯科医療従事者はそのために日々勉強し、診療を行っています。


なるべく歯医者にかかるな!

私たちは皆一人一人その人に最適な歯を神様から授かって生まれてきます。その歯を大切にし、お手入れをし、健全な状態を保つことができれば最高ですよね。でも、減少傾向にあるとはいえ、虫歯にかかる人も多く、歯周病で歯を失う方は後を絶ちません。なぜ?それは皆さんが歯の重要性をわからず、歯の健康を維持する方法をご存じないからです。病気にならなければ歯医者なんかに行く必要はありません。

ですから、まず歯の健康に不安を感じたらそれを教えてくれる歯医者にかかってください。

歯の健康を維持する方法を知っていればたとえ小さな虫歯ができたとしても、軽度の歯肉炎にかかったとしても歯医者での治療はほんの数回ですむのです。「時々歯医者に行ってチェックしてもらう。そして悪いところがあればちょちょいと治して終わり!」  どうですか?


でも歯の治療は長い…

これは一般の方の歯医者への不満で、よく耳にします。一度かかると何ヶ月も通うはめになってびっくりしたことはありませんか?当クリニックでも患者さんが初診でみえた時、お口の中を拝見し、レントゲンや口腔内の写真を見ていただきながら、「こことここに問題があって、このような方法で治さなければならないので4〜5ヶ月はかかります。」などとお伝えすると、ほとんどの方が意外な顔をされます。「歯が痛くなってきたから、その歯だけ治せばいいだろう」と。しかし、痛くなった虫歯というのはかなり程度としては進行していて、神経の治療など大変時間と手間のかかる治療を必要とすることがあるのです。また、そういった虫歯をお持ちの方は、痛みがまだ出ていない、比較的軽度の虫歯も何本かお持ちで、そういった歯を一つ一つ治すとなると、それなりの回数になるのです。「痛くないところは治さなくていい」「そんなとこまで治療するのは過剰診療じゃないか?金儲けか?」と多くの方がお思いでしょう。でも、痛くない虫歯をまだ痛くない時期に治しておくことがとても大切なのですよ。

上記したように、天然の歯が一番!です。でも一度できた虫歯は(ごく初期の虫歯をのぞいて)自然には治りません。ならばなるべく天然の歯に近い状態で治療を終えてしまうのがベストなのです。なるべく削らないために最小限削る必要があるのです。

歯周病に関しては虫歯とは多少事情が変わってきますが、ある程度健康な状態に戻すまでやはり回数にして10回程度は最低かかります。場合によっては外科治療も必要になり、年単位での治療が必要な方もいらっしゃいます。 

まずは正常な状態に戻すことです。そのためにはある程度時間がかかることは我慢してください。


正常な状態に戻ったら…

「時々歯医者に行ってチェックしてもらう。そして悪いところがあればちょちょいと治して終わり!」  どうですか?


 

以下は、今までの治療方針です。ご参照ください。

基本理念

 患者さんのからだになにも足さず、なにも引かないことを理想とする。

 本来備わっている自然治癒力が生涯にわたって発揮できるように助力する。

 歯牙・歯周組織等に回復不能な変化や欠損を生じた場合、

  極力からだに対して低侵襲・低刺激の方策にて修復・補綴を行う。

 再度の侵襲を来すことのないよう、確実で精密な治療を行い、

  治療後のメンテナンスを必ず行う。

 正しい知見にもとづき、余計なこと・無駄なことはやらない。

 自分や自分の家族に対してしてほしくない治療はしない。

  同様にしてほしいと思う治療を行う。

骨 子

〜患者さんのからだになにも足さず、なにも引かない〜

つまりはなるべく歯科治療行為を行わず、抜歯等を行わないということ。

口腔領域の組織や器官はからだのほかの領域の組織や器官と同様に精緻な構造と目的を持って与えられた物です。授かったままの状態でそれを維持し、年老いるとともに経年変化はあれど、なにも手を加えずにその寿命を全うさせる。それこそが医療者に課せられた課題、と私は考えます。


補足

歯を削ったり、つめたり、かぶせたり… 手術をしたり歯を抜いたり… 入れ歯を作ったりインプラントを入れたり…

これらの行為を歯科医療と考えがちです。(我々も、皆さんも。)

  実はこれがもう間違いなのです。

ムシ歯はできる。歯周病にはかかる。歳をとれば歯が抜ける。  そんなことはないのです。

お母さんが歯科衛生士の子供はムシ歯がありません。歯科医師で入れ歯を入れている人はまずいません。

なぜなら、歯科疾患についての正しい知識があり、疾患にかからないための生活様式を自ずから実践しているからです。だったらケチケチしないで患者さんにそれを教えてあげればいいだけの話。それだけの話。

天賦の器官である歯を抜くことは罪だと思います。

また、歯科治療行為は口腔内に異物を置き去りにする行為です。

普段我々が行っているこれらの行為が生体にとって善か悪かを考えてみて下さい。


異物を口腔内に置き去りにする行為… CSを経験したものとしては極めて危険な行為であると考えます。

関連のクリニッキへ。



〜本来備わっている自然治癒力が生涯にわたって発揮できるように助力する〜

人間に限らず、動物には外傷や感染を来した際に健常な状態に回復する能力、『自然治癒力』が備わっています。これはその種の誕生以来地球という環境の中でその環境に適応し外敵から種を保存するために気の遠くなるような年月をかけて獲得した能力です。この能力により多少の外傷や病気、飢えに耐え、生命を維持し、種を保存することができるのです。

この能力が発揮できないような環境にある生命は衰えやがて死に向かいます。環境が変化したならばそれに応じて自然治癒力が発揮できる状況を整える必要性が生じます。


補足

ムシ歯や歯周病、これらの歯科疾患は治らない病気なのでしょうか。 答えは… 否。

そもそもこんな疾患は存在しなかったかもしれません。人類が樹上生活をやめ、狩猟や農耕を始め、得た食材を調理し食することを覚えたときからそのリスクは発生したと思われます。それでもぜいたくな食生活をできなかった一般の人にはあまり縁のない疾患であり続けました。20世紀中頃から庶民の食生活が一変します。それによって爆発的に歯科疾患は増大したのです。つまりは食習慣の変化、ひいては口腔環境の変化がムシ歯や歯周病を喚起しているのです。口腔環境の変化に自然治癒力が追いついていけず本来の力を発揮できないために疾患が引き起こされているのです。

それならば、現代人の口腔環境に見合った生活習慣、食習慣を律することで(ある程度)自然治癒力を発揮できる状況を作り出せるはずです。

その役割を果たせるのが我々歯科医療従事者です。

間違えてほしくないのは、歯科疾患を治すのは我々ではない、ということ。治すのはあくまでも個々の生体の能力:自然治癒能力であり、我々はその能力が発揮できるようお膳立てをするだけ、なのです。

歯科疾患を治癒させるための助力しかできません。しかし、ならばその力を正しく行使しなければなりません。

正しく行使できない(歯)医者は… 82です。

関連のクリニッキへ


〜歯牙・歯周組織等に回復不能な変化や欠損を生じた場合、

  極力からだに対して低侵襲・低刺激の方策にて修復・補綴を行う〜

疾患の進行が自然治癒能力を上回った場合、疾患が進行していきます。歯科領域では初期ムシ歯がいわゆるムシ歯となり、歯肉炎が歯周病へと移行します。そうなると残念ながら『元の状態』に治ることはほぼなくなります。これが、『回復不能な変化や欠損を生じた』状態です。そのような状態に陥らないようにするのが我々歯科医療従事者の第一義的な努めであり、最大限の努力を患者さんと共にしなければなりません。

ここからは『治る』ことのお手伝いだけでは済まなくなり、『直す』ことが必要になります。(からだは常に治ろうとしているんですけどね) つまり、修理・リフォーム・リハビリテーションです。視力が悪くなった人が眼鏡を使うように、手を失った人が義手を作るように、足を失った人が義足を作るように。あるいは足を動かせなくなった人が車いすを使うように。

歯科で行われている治療、修復や補綴、歯周治療はこの段階にあたります。歯科医師も患者さんもここを勘違いしてはイケマセン。

(この項まだ途中…)


つづく。